ソウル大の黄禹錫教授によるES細胞に関するサイエンス論文......偽造を防ぐ手立てはあるのか ― 2005/12/26 14:57
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米科学誌<サイエンス>に掲載されたヒトの胚(はい)性幹細胞(ES細胞)の研究に関する論文を捏造した黄禹錫(フアンウソク)教授が韓国ソウル大を辞職することになった。
ソウル大は<Interim Report on Professor Hwang>を発表。
論文をアクセプトしたサイエンスも独自のニュースポータル<ScienceNOW>で<South Korean Cloning Researcher Resigns>
のタイトルでソウル大の中間報告を受け、黄教授の辞意表明をリポートしている。
とりあえずは<Patient-Specific Embryonic Stem Cells Derived from Human SCNT Blastocysts>(Science 17 June 2005:Vol. 308. no. 5729, pp. 1777 ― 1783 DOI: 10.1126/science.1112286)
(abstractはこちら→
)にある11個分のデータが捏造されていたことが判明。
建物の耐震偽造もそうだが偽造や捏造は人の世の常。何が正しくて何が誤っているのかを見極めるのは容易ではない。おのずと情報源がこれまでにいかに信頼性の高い情報を発信してきたのかという実績が評価の対象になるうえに、誤りがあったときにはいかに適切に訂正して誤りが再び繰り返されないような仕組みを講じることが重要になってくる。
サイエンスを発行するAmerican Association for the Advancement of Science(AAAS)は<Statement by Science Editors on Korean Stem Cell Probe>を掲載。The retraction would be made by the editors even without the formal consent of all the co-authors.として共著者の同意が得られなくても論文を撤回するとしているが、再発を防ぐ手立てはあるのだろうか。
学術論文は速報性が求められるだけに難しい問題に直面してしまった。捏造を100%防ぐには再現実験など検証が必要になるが、新規性をいかに担保するのだろうか。
もちろん、黄教授の世界で初めてヒトクローン胚からES細胞を作成したとするサイエンスの論文についても俎上にのぼっている。
論文のタイトルは<Evidence of a Pluripotent Human Embryonic Stem Cell Line Derived from a Cloned Blastocyst>(Science 12 March 2004:Vol. 303. no. 5664, pp. 1669―1674 DOI: 10.1126/science.1094515)
(abstractはこちら→
)。こちらについてもサイエンスでは慎重に検討を続けているという。